中京大学の中村努先生にインタビューをさせていただきました!

中京大学名古屋キャンパス

今回は中京大学で教授を務める中村努先生に、「医療業界のキャリア形成」についてインタビューをさせていただきました。「在宅医療や地域医療」「人文地理学」などを研究されている中村先生に、医療業界における今後の予測とキャリア形成についてお伺いします。

目次

研究背景・専門領域

インタビュアー
現在ご担当されている授業やご専門分野について、主な内容を教えてください。
中村先生
現在担当している授業は、「人文地理学」「地域らしさの探求」で、地理学に関する内容を扱っています。また、留学生向けに、「日本事情」という日本各地の地理を伝える授業も担当しています。地理学は、自然現象や経済や文化といった人間の活動がなぜ、どのようにして起こるのか、そのメカニズムを明らかにします。

 

特に、地理学は自然・人文・社会の要素を結びつける空間的な視点と複合的な分析力を有しています。近年では、買い物難民や災害の脆弱性、オーバーツーリズムなど、その地域特有の問題が重要なテーマの一つとなっています。

インタビュアー
地域包括ケアや在宅医療といった分野を地理学の視点から研究することでわかることは何でしょうか。
中村先生
私は、地域包括ケアや在宅医療の分野で、これまでケア従事者と利用者相互の関係性を重視して、地域固有の制度や慣習との影響を踏まえつつ、新自由主義的な政策において展開されるケア供給の不均衡を詳細に検討してきました。

 

中山間地域では、地形的制約や施設と人材の不足といった空間的要因によって、大都市では、コミュニティの縮小による介護力の低下といった社会的要因によって、単独の主体では対応困難なケアの空白地域が生じています。これらへの解決策として、多職種による協同の可能性を検証してきました。

医療業界のキャリア教育・人材育成

中京大学豊田キャンパス

インタビュアー
学生には、授業やゼミを通してどのような視点や考え方を身につけてほしいですか。

中村先生
学生には、現代の地域の特徴を、経済、文化・自然などから多面的に読み解くことができる複眼的思考を身につけてほしいと思っています。重要なことは、現代の地域課題について、現場(フィールド)に即して考え、地域の個性を見出すことです。

 

また、地理学では地図が教育方法の武器として備わっているため、多様な地図の表現方法を修得し、地域の特徴を知るためのツールとして地図を活用できるようにしています。

インタビュアー
ICTやデジタル技術の活用は、在宅医療や地域医療にどのような可能性をもたらすと思われますか。
中村先生
ICTやデジタル技術の活用は、あくまで多職種による協同の手段です。その目的は、医療格差の是正、ひいては住み慣れた地域で生活を継続することです。医療アクセスが乏しい地域の自宅療養では、遠隔地からのオンライン診療は強力なツールです。

 

ただ、日常生活の支援、定期的な訪問診療や急変時の入院への備えも欠かせません。ケア従事者はその人の生活状況から、地域の置かれた環境との関連性を理解することが求められます。ICTやデジタル技術は、そうした地域診断を支える基盤となる可能性を秘めています。

医療・福祉分野のキャリア選択

インタビュアー
地域医療や地域福祉に関わる仕事には、どのような専門職やキャリアの選択肢がありますか。
中村先生
地域医療や地域福祉には、「地域」というワードが含まれています。この「地域」には、単に医療や福祉が提供される場所という意味ではなく、住民が生活する社会全体で、必要な医療や保健、福祉の垣根を越えた協同によって、住民の健康を支えるコミュニティという含意があります。

 

したがって、地域医療や地域福祉は、医療や福祉の一部としてではなく、生活とケアが一体となった住民同士の支え合いの仕組みとしてとらえられるべきです。関連する職種として、医療系専門職、介護・福祉専門職、相談・支援専門職以外にも、自治体や社会福祉協議会の職員、無資格・未経験の生活支援員が挙げられます。

インタビュアー
超高齢化社会が進む日本で医療や生活支援の仕組みはどのように変化するとお考えでしょうか。
中村先生
超高齢化社会が進む日本の医療や生活支援の仕組みは、従来の単独の専門機関のみでは対処しきれない段階にきています。そのため、地域内外の関連する多様な主体の協同による、総力戦で臨む必要があります。

 

また、これまでの支える/支えられるといった固定的な関係ではなく、相互に支え合う関係性を意識的に構築していく必要があります。

地域医療で求められる人材とは

インタビュアー
これからの社会で地域の課題を解決する人材にはどのような能力や視点が求められますか。
中村先生
今後ますます、さまざまな企業や組織の利害や思惑から一つの現象を理解しなければならない場面が増えるでしょう。これからの社会では、ある方法論に特化することなく、分野横断的に考察する、学際的な視点が求められます。

 

苅谷剛彦氏の「知的複眼思考法」によると、多角的に物事を分析する能力は、以下の3つです。「情報を正確に読みとる力」「ものごとの論理の筋道を追う力」「受け取った情報をもとに、自分の論理をきちんと組み立てられる力」。こうした基本的な考える力を基礎にしてこそ、物事の本質を見抜く教養力を発揮し、従来の常識を超えた地域の解決策を提示できるものと信じています。

インタビュアー
最後に、これから医療の専門分野で活躍したいと考えている方に向けてメッセージをお願いします。
中村先生
SNSをはじめとするコミュニケーションツールの普及や人口流動化を背景に、分野や地域を越えた協同の可能性もまた広がっています。

 

これから医療の専門分野を目指す方であっても、医療以外の分野や他の地域にも触れつつ、地域住民の生き方を地理的な文脈から深く理解し、その地域ならではの処方箋を提示できるような地域診断のプロとして、また、ともに地域課題に取り組む「共事者」として活躍されることを期待します。

インタビュアー
今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。多角的な視点を持つことが大切だとわかりました。

中京大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、中京大学で教授を務められている中村努先生です。

名称 中京大学
所在地 〒466-0825 愛知県名古屋市昭和区八事本町101−2
ホームページ https://www.chukyo-u.ac.jp/
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