令和健康科学大学の野中嘉代子先生にインタビューさせていただきました!

令和健康科学大学

今回は令和健康科学大学で助教を務める野中嘉代子先生に、「医療・看護業界でのキャリア形成」についてインタビューをさせていただきました。理学療法士の養成学校で職業的アイデンティティ、プロフェッショナリズムを研究されている野中先生に、医療・看護業界における今後の予測とキャリア形成についてお伺いします。

目次

先生の研究・活動について

インタビュアー

改めて、今回のインタビューをお受けいただき誠にありがとうございます。はじめに、研究背景・専門領域についてお聞かせください。

野中先生

理学療法士の養成校で19年間教員として学生教育に携わる中で、私はProfessional Identity(職業的アイデンティティ)やプロフェッショナリズム、そして学生教育という研究テーマにたどり着きました。このテーマは、これまでに出会ってきた多くの学生たちとの関わりの中で育まれてきた問いであり、今まで出会ったすべての学生への感謝の気持ちでもあります。

 

現在は、理学療法士が専門職として長く、いきいきと働き続けるために何が支えになるのかを明らかにすることを目指して研究に取り組んでいます。これまでの研究からは、Professional Identityが高い理学療法士ほど、仕事への適応感や達成感が高く、バーンアウトしにくい傾向が示されています。

 

Professional Identityとは、単なる自己肯定感ではなく、「理学療法士として働く意味」や「専門職としての価値観」を、自分自身の中に少しずつ統合していく過程そのものだと捉えています。そのため、日々担当している理学療法評価学やOSCEなどの実技系授業においても、技術の習得だけでなく、医療人として人と向き合う姿勢や、専門職として信頼される立ち振る舞いを体感的に学ぶことを重視しています。

 

学生時代からプロフェッショナリズムやProfessional Identityを意識した教育を行うことが、将来のキャリア選択や困難に直面した際の拠り所となり、結果として持続可能なキャリア形成につながると考えています。

キャリア形成

インタビュアー

主体的にキャリア形成を進めている学生にはどのような行動や思考の特徴がありますか?また、専門職を目指す人のキャリア形成で、知識や技術以外にも重要になる力があれば教えてください。

野中先生

主体的にキャリア形成を進めている学生には、共通した行動や思考の特徴があります。それは、「今の経験が将来にどうつながるのか」を自分なりに考え、行動に移そうとする姿勢です。

 

必ずしも最初から明確な目標があるわけではありませんが、振り返りを通して経験を意味づける力を持っています。私が学生と関わる中で大切にしているのは、学生自身が自分の特性としっかり向き合えるよう支援することです。

 

そのために、日々の授業や実習の中での何気ない発言や行動、いわば一挙手一投足を丁寧に観察しています。学生が何に対して努力しているのか、どこでつまずいているのか、自身の強みに気づけているのか、また課題を自覚できているのかを見極め、言葉として返すことを心がけています。

 

この自己理解は、仕事だけでなく、人間関係やプライベート、人生のさまざまな出来事すべてに影響します。だからこそ、できるだけ早い段階、特に20代前半のうちに「自分とは何者か」を理解することが、将来の指針となり、生きる力につながると考えています。

 

以前、学生から「先を見据えて心に寄り添い、愛をもって導き、社会に巣立つ私たちに勇気と生きる力を育ててくれた」と言葉をもらったことがあります。人を育てることは愛であり、与えたものが感謝として返ってくる。その素晴らしい循環こそが、教育の本質だと感じています。

職業選択・企業選びについて

インタビュアー

AIやデジタル技術の発展によって、今後理学療法士をはじめとする医療専門職の役割はどのように変化していくとお考えですか?

野中先生

AIやデジタル技術の発展により、理学療法士をはじめとする医療専門職の役割は変化していくと考えています。評価や記録、情報整理などはAIが補完する場面が増える一方で、理学療法士の仕事そのものがなくなることはありません。

 

むしろ、AIを適切に活用し、臨床に生かすためのスキルが、今後ますます重要になると感じています。医療は生身の人間を相手にする営みであり、その場その場での判断や対応、相手の表情や言葉にならない思いをくみ取る力は、AIには代替できません。

 

だからこそ、専門的知識や技術に加えて、人としての在り方や人間性を磨き続けることが求められます。

インタビュアー

「職業的アイデンティティ」はこうした変化の中で、どのような意味を持つと思われますか?

野中先生

こうした変化の中で、Professional Identityは「自分はどのような専門職でありたいのか」という軸を保つための重要な拠り所になります。技術が進歩しても、自分の価値観や専門職としての役割意識が明確であれば、環境の変化に柔軟に適応しながら、納得感のある職業選択やキャリア形成が可能になると考えています。

これから医療職を志す方へのメッセージ

インタビュアー

「自分はこの仕事に向いていないのでは」と悩む人にどのような言葉をかけたいですか?

野中先生

これまでお話ししてきた内容に共通しているのは、「自分自身を知ること」の大切さです。専門職としてのキャリアは、知識や技術を積み重ねるだけでなく、自分が何を大切にし、どのような価値観で人と向き合いたいのかを問い続ける過程でもあります。

 

学生時代には、必ずしも得意なことばかりに取り組めるわけではなく、苦手意識を抱く課題や思うようにいかない経験にも直面します。また、「自分はこの仕事に向いていないのでは」と悩むこともあります。

 

そのような場面で、すぐに答えを求めるのではなく、粘り強く取り組み続けること、そして自分が「できること」「まだ難しいこと」を冷静に把握する姿勢が、のちの成長の土台になります。そうした迷いの中で、自分の強みや特性、つまずきやすい点に気づくことが、専門職としての成長につながります

 

また、専門職として成長していく過程では、すべてを一人で抱え込む必要はありません。自分の力を正しく理解したうえで、周囲の助言や支援を求めながら学びを深めていくことも、重要な専門的能力の一つです。他者に援助を求めることは弱さではなく、より良い実践へとつながる前向きな選択だと思っています。

インタビュアー

これから専門職を目指す人が大切にしてほしい視点を教えてください。

野中先生

このように、学生時代から自己理解を深めることが、Professional Identityを少しずつ育てることに繋がり、AIや環境の変化が進む時代においても、自分を支える確かな軸になります。自分を知ることは、キャリアを選ぶためだけでなく、困難に直面したときに立ち戻れる場所を持つことでもあります。その積み重ねが、生き方としてのキャリアを豊かにしていくと考えています。

 

私のこれまでの経験や考えが、キャリアに悩む誰かの心にそっと届き、「もう少し続けてみよう」「一人で抱えなくていい」と感じるきっかけになれば幸いです。

インタビュアー

今回はとてもためになるお話を聞かせていただきありがとうございました。自己理解を深めて価値観を大切にしながらキャリア選択をしていきたいと思いました。

令和健康科学大学の基本情報

今回インタビューにご協力いただいた先生は、令和健康科学大学で助教を務められている野中嘉代子先生です。

名称 令和健康科学大学
所在地 〒811-0213 福岡県福岡市東区和白丘2丁目1−12
ホームページ https://www.rhs-u.ac.jp/
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